「位置情報なし」の救助要請を出さない
ホテルの部屋の奥で、キャストが安全デバイスのボタンを押す。端末は衛星をつかもうとするが、窓から離れた室内ではまず取れない。 それでもボタンが押されたことだけは、携帯の電波で届く。座標は空っぽのまま。 昨日の最後に書いた、このときどの位置を知らせるかの話。
最初の作りは正直だった。届いたメッセージに座標がなければ、通報の位置も空。店の画面のお知らせも、連絡先へのSMSも「位置情報なし」と書いて送る。 7月の終わりに安全デバイスまわりを頭から調べ直したとき、これがいちばんありそうな場面だと気づいた。 屋内で測位できないままボタンが押されるのは例外ではなく、たぶん最頻のケースだ。 位置のない救助要請は、受け取った側が何もできない。
数分前の位置でも、無いよりはるかにいい
今は、通報に座標がなければ、端末が最後に送ってきた座標で補う。 端末は位置が取れるたびに「最終測位」の座標と時刻を更新しているので、ホテルの玄関に着くまでの移動中に取れた位置が残っている。 部屋の中まで分からなくても、どの建物かは分かる。 通信途絶の警告も同じ補い方で、途絶している間は新しい位置が来ないから最終測位を載せる。
ただ、補うと決めた途端に、最終測位をどこまで信じていいかが問題になる。 同じ調査で2つ直した。 ひとつは、最終測位と最終通信を分けたこと。それまでは「最後に通信した時刻」を鮮度に使っていたので、屋内で位置が取れない端末の古い座標が「いまの位置」として扱われていた。 端末からの通信には、座標の付かないものもある。 座標が付いたメッセージの時刻だけを「最終測位」として別に持ち、うちのデリヘル管理サイトの安全モニタリングには両方を並べて出す。 上の画面で「最終測位 12分前」と「最終通信 2分前」が並んでいるのがそれで、地図が開くのは12分前の位置だと、見た人が分かるようにした。
もうひとつは、測位できていないときに緯度0・経度0を送ってくる機材があること。 そのまま受け取るとキャストがギニア湾の沖に表示されるだけでなく、最終測位がその海の座標で上書きされる。 そうなると、部屋の中で押されたSOSは玄関ではなく海を指す。 緯度経度が範囲の外か、ぴったり0と0のときは「測位なし」として捨て、最終測位を進めない。
宿題がひとつある。連絡先へ送るSMSには「位置」と地図の場所だけが書いてあって、それが何分前の位置かを書いていない。 画面を開けば分かるが、SMSだけ受け取った人には分からない。 明日は、このボタンそのものの癖の話。押したのに「解除」として届くことがある。