番号は変えられても、声は変えにくい

「番号、変えてかけてくるんですよ」。NG客の対応をどうしているか聞いたときに 返ってきた言葉だ。電話番号でのブロックは当然できる。でも格安SIMやIP電話で 番号なんていくらでも増やせる時代に、番号だけを見張るのは、 顔写真を貼らずに名前だけで出入り禁止にするようなものらしい。

番号は変えられる。でも声は変えにくい。なのでこのデリヘル管理システムは、 通話のたびに録音から声の特徴を数値の並び(声紋)にして顧客ごとに貯めている。 NG顧客の分だけを集めた照合用の索引を毎晩作り直しておいて、着信があるたびに そこへ突き合わせる。見覚えのない番号なのに声がNG顧客と似ていたら、 受付画面に赤いバナーが出る。店NGかキャストNGかの種別、NGにした理由、 どのくらい似ているかの数字つきだ。

オペレーター受付画面。未登録番号からの着信中に「店NG顧客の疑い(声紋一致)」の赤いバナーが表示され、NG顧客の登録番号・NG理由・類似度0.93が並んでいる
未登録の番号からの着信に「店NG顧客の疑い(声紋一致)」が出たところ(開発環境のシミュレーション。番号・データは架空のものです)。

照合は電話を切ってからではなく、通話中の音声をそのまま流して行っている。 切ったあとに「さっきの、NGの人でした」と分かっても手遅れだからだ。 AI電話受付が応対している最中も照合は裏で動いていて、一致したら人間のオペレーターに 自動で転送する。全員が通話中で転送できなければ、AIが応対を続けながら バナーに「手が空いたら介入できます」と注記が出る。

「疑い」までしか言わせない

設計で一番こだわったのは、システムに断定させないことだ。声紋は指紋ほど確実ではない。 声は体調でも変わるし、電波が悪ければ特徴も濁る。だからバナーは 「NG顧客の疑い」と類似度の数字を出すところまでで、電話を切るのも 普通に受けるのもオペレーターの判断に任せる。自動でガチャ切りはしない。 間違っていたときに失礼が生じるのは、機械ではなく店だからだ。 逆に、すでにNGと分かっている登録済みの番号からの着信は照合にかけない。 本人が普段の番号からかけてきただけで「番号変更の疑い」と自分自身に一致して 騒ぐのは、誰の役にも立たない。

ちなみにキャストNGの声紋は、そのキャストが掛け持ちや移籍で系列の別店舗に 移っても付いていく。移籍先にまだ録音が1本も無い日から照合が効く。

今日はこの機能の開発環境用シミュレーション(NG顧客が番号を変えてかけ直してくる シナリオをワンクリックで再現するテストボタン)を触っていて、表示の抜けをひとつ直した。 バナーの「発信番号」と「NG顧客の番号」が同じ番号で出ていたのだ。 番号を変えてきた、という話なのに画面では同じ番号が2つ並んでいる。 本番の照合結果では別々の番号が入るので実害はないのだが、 デモを見た人が最初に混乱するのはそこだと思う。スクショを撮ろうとして自分が混乱した。

明日は、声紋より手前の防波堤——いたずら電話を自動でNGにする仕組みのことを書く。