番号は変えられても、声は変えにくい
「番号、変えてかけてくるんですよ」。NG客の対応をどうしているか聞いたときに 返ってきた言葉だ。電話番号でのブロックは当然できる。でも格安SIMやIP電話で 番号なんていくらでも増やせる時代に、番号だけを見張るのは、 顔写真を貼らずに名前だけで出入り禁止にするようなものらしい。
番号は変えられる。でも声は変えにくい。なのでこのデリヘル管理システムは、 通話のたびに録音から声の特徴を数値の並び(声紋)にして顧客ごとに貯めている。 NG顧客の分だけを集めた照合用の索引を毎晩作り直しておいて、着信があるたびに そこへ突き合わせる。見覚えのない番号なのに声がNG顧客と似ていたら、 受付画面に赤いバナーが出る。店NGかキャストNGかの種別、NGにした理由、 どのくらい似ているかの数字つきだ。
照合は電話を切ってからではなく、通話中の音声をそのまま流して行っている。 切ったあとに「さっきの、NGの人でした」と分かっても手遅れだからだ。 AI電話受付が応対している最中も照合は裏で動いていて、一致したら人間のオペレーターに 自動で転送する。全員が通話中で転送できなければ、AIが応対を続けながら バナーに「手が空いたら介入できます」と注記が出る。
「疑い」までしか言わせない
設計で一番こだわったのは、システムに断定させないことだ。声紋は指紋ほど確実ではない。 声は体調でも変わるし、電波が悪ければ特徴も濁る。だからバナーは 「NG顧客の疑い」と類似度の数字を出すところまでで、電話を切るのも 普通に受けるのもオペレーターの判断に任せる。自動でガチャ切りはしない。 間違っていたときに失礼が生じるのは、機械ではなく店だからだ。 逆に、すでにNGと分かっている登録済みの番号からの着信は照合にかけない。 本人が普段の番号からかけてきただけで「番号変更の疑い」と自分自身に一致して 騒ぐのは、誰の役にも立たない。
ちなみにキャストNGの声紋は、そのキャストが掛け持ちや移籍で系列の別店舗に 移っても付いていく。移籍先にまだ録音が1本も無い日から照合が効く。
今日はこの機能の開発環境用シミュレーション(NG顧客が番号を変えてかけ直してくる シナリオをワンクリックで再現するテストボタン)を触っていて、表示の抜けをひとつ直した。 バナーの「発信番号」と「NG顧客の番号」が同じ番号で出ていたのだ。 番号を変えてきた、という話なのに画面では同じ番号が2つ並んでいる。 本番の照合結果では別々の番号が入るので実害はないのだが、 デモを見た人が最初に混乱するのはそこだと思う。スクショを撮ろうとして自分が混乱した。
明日は、声紋より手前の防波堤——いたずら電話を自動でNGにする仕組みのことを書く。