「都町のことでしょうか」と、一度だけ聞き返す
「恐れ入ります、都町のことでしょうか」。 AIの受付にこの一言を言わせるかどうかで、けっこう迷った。 電話の声は文字に起こすと崩れる。「ミヤコマチ」が「ミヤコマシ」になるくらいのことは普通に起きる。 登録した呼び名の中に、読みが1文字だけ違うものが1つだけある。ほぼ間違いなく都町だろう。 それでも黙って都町に決めずに、一度聞き返すことにした。
決めるのは、ぴったり一致したときだけ
昨日書いた呼び名のマスタは、表記・よみ・別の言い方のどれかが完全に一致したときだけ行き先を確定する。 比べる前に、ひらがなとカタカナ、全角と半角、空白や記号の違いは揃えるが、濁点は落とさない。 濁点ひとつで別の地名になることがあるからだ。
一致しなかったときに、読みが1文字だけ違う呼び名を探す。1文字の置き換え・抜け・余分のどれかひとつまで。 見つかっても、AIに渡すのは「この候補で確定していない、お客様に復唱して同意をもらってから正式名で引き直して」という返事だけで、 座標は渡さない。座標が手元にあれば、AIはそのまま交通費を案内し、予約を作り、通話のあとの下書きにも入れてしまう。 推測の場所が、誰も確かめないまま配車まで流れていくのがいちばん怖かった。
聞き返さない場合も決めてある
1文字違いを候補にするのは、比べる語が4文字以上のときだけにした。 3文字以下の短い読みは、1文字変えると別の実在の地名になりやすい。そこで「◯◯でしょうか」と聞くと、 お客様が言ったはずの場所を勝手に別の場所へ言い換えることになる。 同じくらい近い呼び名が2つ以上あるときも推測しない。どちらかを選んで聞くのは、半分の確率で外す質問だ。
順番も気にした。うちのデリヘル管理アプリでは、町名の読みが近いものを推測して座標つきで返す処理が後ろに控えている。 呼び名の1文字違いはそれより先に見て、確認の質問に回す。店がわざわざ登録した呼び名のほうが、 郵便番号の町名から推測した場所より、お客様が言いたかった場所に近いはずだからだ。
聞き返す一言のぶん、通話は数秒長くなる。それでも、車が別の街へ走り出してから気づくよりはずっと安い。